アメリカインディアン ホピ族の神話

第4章 第4世界 完全なる世界に向けて

第四の世界 完全なる世界

 「分かれる前に、いっておかなければならないことがある」ソツクナングは、第四の世界の岸辺に立っている人々に向かって言った。
 「この第四の世界の名はツワカキ、つまり完全な世界である。その理由はいずれわかるだろう。かつての世界ほど美しくも、楽でもない。高いところや低いところ、熱と寒さ、美しいところや荒れたところがある。あなた方に選びとれる全てのものがここにある。」
 「あなた方が何を選ぶかが、創造の計画を今度こそ遂行できるか、あるいはいつの日かふたたび世界を滅ぼすかを決定するのだ。さあ、あなた方は分かれて違った道を進み、地の全てを創造主のために所有せよ。あなた方のどの集団も、星のあとに従うように。星が停止した場所があなた方の定住する場所である。行きなさい。あなた方は善霊から助けを得るだろう。あなた方の扉を開けたままにして、私が語ったことをいつも覚えておくようにしなさい」

 こうして、彼は姿を消した。

 人々が岸辺から離れ、内陸へと入っていくと、低い風の音がまたきこえてきた。辺りを見渡すと、ハンサムな男が目に入った。
 「あなたですか。音を立てたのは?」男はこう答えた。「そうだ。あなた方が道を探せるよう、私が音を立てたのだ。私がわからないか。マサウだ。この陸地の守護者、世話役である」
 人々は、マサウを知っていた。彼は第三の世界の世話人の長だったのだが、やや尊大になり、創造主の御前で謙虚さを失ってしまったのである。霊であるため、彼は死ぬことができなかった。そこで、タイオワは彼をその役目から外し、死と地底世界の神としたのだった。この地底での仕事は地上ほど楽しいものではなかった。そこで、第三の世界が滅びたときに、タイオワは彼にもう一度チャンスを与え、次の第四の世界の世話人に抜擢したのである。

 この世界で出会った最初の存在だったため、人々はマサウを尊んだ。「この陸地に住むことを許可してくださいますか?」と彼らは尋ねた。
 「よろしい。大地の所有者としてあなた方を許可しよう」
 「指導者になっていただけますか?」
 「それはできない。私より偉大なお方が、あなた方にはたすべき計画を与えているのだ。
 前の世界が海中に没したときに、この新しい陸が突き上げられて地球の背骨となった。あなた方がいるのは、その西側斜面だ。しかし、まだ移住は始まっていない。あなた方はまだ、星を追って定住する場所に辿り着く旅を始めていないのだ。私が指導者になる前にそれを終えていなくてはならない。
 しかし、あなた方がまた悪しき道に戻るならば、私は大地をとり上げてしまうだろう。私が世話役で守護者だからである。北に行くと、寒さと氷に出会うだろう。そこは、この陸の裏門にあたる。この裏門を通って入ってくる者たちは、私の許可を得ていない者たちだ。さあ、行って私の許可によって土地を求めなさい」

 マサウが消え去ると、人々は集団に分かれて移民を始めた。
 「また会おう」と彼らは互いに呼びかけ合った。
 われらが第四の世界は、こうして始まった。その名はツワカキ【完全な世界】方角は北、色はシクヤングプ【黄白色】。主なるものは、木ではジュニパー、鳥ではフタロウ、動物ではピューマ、また混ざり合った鉱物シクヤパラがあった。