アメリカインディアン ホピ族の神話

第1章⑤ 第1の世界 コパビ【開き扉】

コパビ【開き扉】


 人において、この第一のものは頭頂にある。人類が誕生した当初、ここにはコパビ【開き扉】と呼ばれる柔らかな点があった。人は、ここを通して生命を受け、創造主と交わったのである。呼吸する度に、この柔らかな部分は創造主と交わる穏やかな波をもって上下した。赤い光タラウバの時代、つまり創造の最後の段階において、柔らかな点は徐々に固まり扉は閉ざされてしまった。これは、人が死ぬときまで閉じたままであり、死に至ると生命が飛び立つために開かれる。

 このすぐ下に、第二のセンターがある。人が自分でものを考えるための器官、脳と呼ばれる思考器官である。その働きは、地上での活動について考えさせることにある。だが、自分の活動が創造主の計画に一致すべきであることを理解すればするほど、思考器官本来の機能は全創造物の計画を遂行することにあることを、人はますます知るようになる。

 第三のセンターは喉にある。ここは、生命の息吹を受けとる鼻と口を波動器官に結びっけ、音とともにその息を返す働きをもっている。この原初の音は、地球という体の波動センターからくる音と同じく、全創造物の宇宙的波動と同調している。新しい各種の音が青葉と歌の形をとってこれら発声器官から生み出されるが、これは第二義的な機能である。だが、中心となる機能を理解し始めるにつれて、人は創造主に向かって語り、讃美するためにこのセンターを使い始めた。

 第四のセンターは胸。これもまた、生命そのものの波動に震える振動器官である。人は、心の中で生命の善とその真の目的を感じとる。人は「一つの心」をもつ。だが、邪悪な思いが入ることを許す者たちもいた。彼らは「二心」をもつ者と呼ばれた。
 人間のもつ重要なセンターのうち最後のものは臍の下に位置する、いわゆる太陽神経黄である。その名が暗示するとおり、ここは人の中にある創造主そのものの座である。人の働きは全て、この中枢から命令されているのである。

 最初の人々は病というものを知らなかった。悪が世界に入って初めて、人は体と心に病を生じるようになった。人の成り立ちを知っている呪師は、各中枢を調べることによって、どこが悪いかを告げることができた。呪師はまず、頭頂、額、喉、胸、腹の上に手を置く。
呪師の手は幻視の道具であり、各センターからの波動を感受してどこがもっとも強まっているか弱まっているかを伝えた。不消化な食物からくる胃腸の痛みや風邪にすぎない場合もあったが、患者自身の悪い思いや「二心」の者たちによって、外部から痛が呼び込まれる場合もあった。このような場合、呪師は薬袋から直径四センチほどの水晶をとり出して、まず太陽に当てて使えるようにし、それから各センターを水晶を通して覗く。

こうすることによって、病の原因を、ときには病を起こさせている「二心の者たち」の素顔をもみることができた。水晶には、何一つ魔力はない、と呪師は常々いっている。凡人がそれを眺めてみても、何もみることはできない。水晶は、視覚中枢の映像を客体化するにすぎないのである。

 こうして、最初の人類は自分自身を理解した。これが彼らの生きた第一の世界であった。
その名前はトクペラ、すなわち「無限宇宙」である。その方位は西。色はシクヤングプ【黄】、鉱物はシクヤスブ【金】である。大きな頭の蛇カトヤ、脂肪を食べる鳥ウィソコ、四ツ葉の草ムハがその世界にいた。最初の人類は純粋で幸せだった